★「みなし残業」トヨタの“残業代保証”に学ぶこれからの裁量労働★

◆「トヨタの新たな給料制度から学ぶ理想的なみなし残業」 「裁量労働を導入することによる従業員満足度拡大」 「残業代カットをすることなく労働生産性を上げるにはどうすべきか」◆


トヨタの給料

 

①みなし残業と裁量労働はトヨタに見習うべき

 

トヨタ自動車が新たな裁量労働の制度と給与制度を2017年12月から開始する(→トヨタ、裁量労働 実質拡大 一定の「残業代」保証 )。8月に報道されたものだが、それが本日10月14日のトヨタ労組大会で可決されたという。なんとも胸が高鳴るニュースではないか。内容はリンク先の日経新聞記事をご覧になっていただだくとして、結論は残業時間に関係なく毎月45時間分の手当を支給する(月45時間を超えた分の残業代は別途支払う)。つまり、残業しても残業しなくても月17万円(年換算204万円)を一律で支給するという経営判断である。絶望的な労働生産性の低さを誇るサービス業において、残業代カットで労働生産性を高めようとするという不毛な取り組みが多く見られる中、効率化のトップランナーである製造業のトヨタが、裁量労働を決定したことを全面的に支持したい。他社も是非トヨタに続いて貰いたいものだ。本日はトヨタの新たな給与制度から、日本のみなし残業について考察することとしたい。

 

<要点>

・17万円のみなし残業代を一律に支給(残業時間に関係なく支給(45時間分の残業代に相当)。

・時間管理を明確にし上限時間(45時間)を超えた分については超過勤務手当を支払う。

・新しい勤務形態&給料制度の対象は約7,800人(事務職や技術職の係長クラス)。

・週1日2時間 以上の出社すれば、在宅勤務を認める制度を導入済(総合職から一般職へ拡大)。

 

 

②トヨタの給料と年収(四季報の見せかけデータにはないリアルな金額)

 

今回、トヨタの給与制度変更の対象は、事務や研究開発に携わる主に30代の係長クラス(主任級)の総合職約7,800人であるという。これはトヨタの従業員数(単独)の約7.4万人の10%程度に該当する。どんな層が対象になるのかを説明しよう。「大学卒&大学院卒の30歳代前半の社員」が主に該当する。優秀な社員(評価の高い社員)は40歳前で管理職になるので、30歳~40歳までの大卒総合職社員とイメージしていただければ良い。実際にどれくらいの年収になるのか簡単に試算してみよう。

 

●トヨタの大卒社員35歳のモデル給料:936万円

「35万円(額面月収)+17万円(月残業手当)」×「18カ月(12カ月/1年+賞与6カ月分)」

※ちなみに月45時間:17万円は時間給約3,780円。

 

四季報の平均年収では852万円(39歳)と記載されている。だからトヨタの年収がそんなに高いはずがないではないか? と指摘する方もいるかもしれない。四季報の平均年収の数字と実際の給与金額の実態の違いをおそらく知らないのだろう。メーカーには様々な職種の従業員がいる。単純化すれば、大卒&院卒の総合職、高卒や短大卒の一般職(業務職ともいう)、工場勤務の正社員、そして期間工と呼ばれる期間従業員である。どのステータスに所属しているかどうかで驚くほど給料は異なる。この全体をならした数字が平均年収だ。

 

これはトヨタに限った話ではなく、製造業のような工場で働く方が多く存在する企業のほとんどで言えることであり、39歳で年収852万円という従業員は実際には存在しない。総合職であれば、40歳前に確実に1000万円を超えるし、高卒であれば700万円程度だろうか? 学歴による区別や、製造現場を支える人材との差はいかがなものかと思うが、これが残念な現実である。なお、私の知人のトヨタ社員は皆30歳代前半で年収1000万円を超えたので、実際は950万円プラスマイナス10%と考えていただければ間違いない。それでも、ミッドランドから豊田市本社に異動になり、ひどく落ち込んでいた。

 

 

③優秀な人材の採用に必要なことは、裁量労働導入ととみなし残業充実

 

他人の給料ほどどうでも良い話もない。トヨタの総合職の給料が大変に良いのは事実でわかりきったことであり、あなたがまだ若ければ良い大学に進学して就職を目指せば良いし、転職活動を頑張れば良い。まず第一に伝えたいことは、企業選びは非常に重要な選択となることである。これを声を大にして学生に伝えたい。鴻海に買収される随分前の、亀山モデルを前面に出し、液晶の全盛期を誇った時代でもシャープの給料は驚くほど低かった。だから学生は就職先の給料を冷静に調査して欲しい。離職率も要注目だ。地方銀行や証券会社…。悪口になりそうなのでやめておくが、憧れやイメージだけで選ぶとひどい目に合う。

 

さて、みなし残業と裁量労働である。結論としては、残業時間と残業代をカットして労働生産性をアップするなどという、労働意欲を奪うとともに景気を悪くするような愚策を推進する企業は、是非ともトヨタを見習ってもらいたい。つまり、みなし残業手当を実際の残業時間より少ない時間で設定するべきであり、みなし残業時間を超えたらその分を適切に支払えということである。

 

こんな当たり前のことを声を大にして言わなければならないほど、ブラック企業では酷い労働環境がまかり通っている。みなし残業を10時間や20時間に設定することで求職者に給料を大きく見せて、実際には50時間超勤を前提としていたり、どれだけ超勤をしても残業代はみなし残業に含まれるとして支給しないといったケースが多くある。

 

残業代を支給したりみなし残業を充実させると、労働生産性が下がるではないか? おっしゃる通り。だがこの歴史的な人手不足の現在、まっとうな労働環境と給料制度を整えないと、優秀な人材は確保できないし、離職を防止できない。残業をカットして労働生産性を高めるなどという卑怯な取り組みではなく、真っ向から業務改善に取り組むべきであるし、合理化と効率化については弊社がコンサルティングを請け負うので問い合わせしていただければと思う。

 

 

④トヨタに学ぶ在宅勤務(テレワーク)と裁量労働

 

なお、トヨタは総合職を対象に、週2時間以上出社すれば在宅勤務を認める制度(テレワーク)を既に導入しており、今回の新たな給料制度導入に併せて、オフィスなどで業務支援をする中堅以上の一般職約4,200人に対象を拡大する。トヨタ自動車という業界トップが働き改革でも先頭を走っている。総合職や一般職の引き手あまたのトヨタでさえ、優秀な人材を確保したり維持するために、従業員の働き方を改善しつづける姿勢を他社も見習うべきだろう。

 


トヨタの残業制度