★高島屋の限定グッズ販売の炎上に見る想像力の欠如とクレーマーで溢れる現代社会「百貨店分析」★

百貨店経営

 

「京都高島屋の限定ロリーナ人形 買占め&転売 騒動の考察」「先着順販売という愚策を選択する百貨店の販売戦略の稚拙さ」 「プレスリリース一つまともに出せない百貨店の人材難」「百貨店の限定グッズ販売をどうマーケティングに活かすべきか?」

 

京都高島屋が客1人2体までとして100体限定で受注販売した「ロリーナ」という名前の女の子の人形が,1人の男性客に買い占められていたことが話題になった(→転売目的? 限定人形100体買い占め 京都高島屋 ~日本経済新聞~).事の経緯は以下の通りである.

 

 

①開店前から約200人の行列ができた.

②先着50人に整理券を配布(50人全員が2つ購入を希望したため(50人×2個).

③整理券を受け取った50人が複数カウンターで申込手続きを実施したところ,1人の男性が50人分の代金を支払った.

④この「京都高島屋限定人形買占め」の様子や苦言がSNSで拡散.マスメディアが飛びつく.

⑤中国の通販サイトには「京都高島屋限定」としてロリーナの転売情報が早速掲載される.

⑥「買占め」「転売」「百貨店の対応」「中国人消費」が話題となる.

 

 

この人形買い占め騒動について,買占めや転売,高島屋の対応についての苦言などのクレームがSNSで拡散されて,テレビのNEWSやワイドショーで取り上げられたことから,大事件のように報道されている.実に不毛なネタであると思う.日本はルールやマナーにセンシティブであるくせに,自分の都合が悪くなると平気でダブルスタンダードを非論理的に叫ぶ悪い傾向がある.

 

そしてテレビのコメンテーターは事実関係の整理や法律関係の解説をするでもなく,感情論で非論理的な指摘を物知り顔で語り,勝手に事件化する.日本の社会とメディアがそれぞれに病んでいて,酷い話になっている.本件の愚かさについて少しだけ言及することにしたい.

 

高島屋の先着販売

 

◆京都高島屋の限定ロリーナ人形「買占め&転売」騒動 対応すべきクレームと無視すべきクレームについて◆

 

 

購入希望者や視聴者のクレームは,以下の2点に集約できると考える.

  1. 「転売目的で購入されたこと」「1人の男性がすべて買い占めたこと」への不満
  2. 「高島屋の対応」の是非と不満

買い占めは転売目的ではないか? という指摘や,買い占めはファンの好意を踏みにじる行為だなどとの批判がるという.耳にするだけでくらくらするくらい馬鹿げたクレームであると思う.

 

1.「転売と買占め」について.

 

「先着順に」「ひとり2つまで」「100個限定」でグッズを販売すると京都高島屋が決めており,並んだ人間が購入できるか否かをはっきりさせるために,先頭から順番に購入個数を聞いて整理券を配っている.整理券を手にした「購入権利者」が限定グッズと転売しようが,誰かに譲渡しようが,その場で捨てようが,所有権のあるものの自由ではないか?

 

一人ずつ購入目的を確認するのか? その購入目的が販売者の意向に沿わなければ売らないのか? 本当に馬鹿げている.感情論で買占めを批判する性質の悪いクレーマーに対して,販売元は強気な対応をするべきだろう.

 

私はこの報道を見たときに,リスク管理の素晴らしさに感心した.限定グッズを手に入れるという目的のために合理的でコストパフォーマンスに優れた戦略を立てているからだ.リスク管理が実に上手い.通常の手段で買占めを実施するためには,今回のルールに沿って50人を準備する必要がある.一般的な転売屋であれば,以下の戦略を考えるだろう.

 

「購入費用を50人の個別に渡し,それぞれで購入手続きまで完結させる」

 

この手法の問題は「リスクが大きい」ことだ.というのも,この手順で進めるには,信頼をおける人間に依頼をする,もしくは購入したグッズを譲渡するように事前に契約を結ばねばならないし,購入者のリテラシーも必要になる.全員がきちんと購入手続きをするように事前にレクチャーする必要もあるだろう.

 

しかるべき契約で縛っておかないと,限定人形を自分のものとされてしまうリスクや,購入費用12.4万円を持ち逃げされてしまう恐れもある.信用が前提となるのだ.これをコントロールするには非常にコストがかかり,それなりの稼働も必要となる.つまり,とても手間がかかるのである.だから買占めが割に合わない仕事になってしまう.

 

一方で,今回の買占め転売は,百貨店に並んで整理券を得て手続きカウンターに一緒に行くというシンプルな業務内容でアルバイトを募集して時間を買ったのだろう.なんて合理的でドラスティックなことか.購入費用の持ち逃げリスクもなければ,購入手続きのミスもない.並んだ時間はわからないけれども時給1000円でこの業務を依頼したのであれば,例えば,5時間×1000円×50人で25万円の経費だけで済む.1個25000円の転売差益が期待できるとするならば,250万円-25万円=225万円の粗利が(手間や送料は省く)見込め,リスクが徹底的に排除されており,実に賢いビジネスである.

 

本件はこの買占めを実施した者の有能さを純粋に褒めるべき事案であり,加えてこのような販売手法を実施した京都高島屋の手法の甘さとクレーマーのヤバさを事例として,反面教師の素晴らしいケーススタディを示してくれたと学ぶべきだけのことであり,テレビや新聞で馬鹿騒ぎするほどのネタだろうか?

 

 

2.「高島屋の対応」の是非と不満について.

 

本件は,先着順に整理券を得て購入を希望する者という高島屋のルールに沿って正当な手順を踏んだ者に対して,販売を認めないなどという論理は成立しないし,購入目的を販売側が調査するなど言語道断である.この買占め客が中国人(らしい)ことが本件の炎上に油を注いでいるようだが,購入希望者の国籍で判断するなんて,人権問題ものだ.

 

日本人の島国根性というか,中国や東南アジアの方々を下に見る風潮というのは,手痛い火傷を負う前に意識改革すべきだろう(大人になってから再教育することはほぼ不可能なので手遅れであるかもしれないが).話がやや逸れたが,京都高島屋が販売の現場で,おそらく転売を目的とする買占め屋の方に,淡々と販売の手続きを実施したことは現場の対応として素晴らしいと評価したい.もしここで販売拒否などの対応をとっていたら企業存続リスクにもなっていただろう.

 

京都高島屋の現場の人材の対応については,褒めるべきであって決して否定や非難をされるべきではない.ルールに乗っ取って動いている人間に大して,マナーやモラルを強要し,キチガイのようなクレームを叫ぶ連中が,大相撲の土俵で救命措置をしている女性に対して,土俵に上がるなと叫んだり,それに便乗して,緊急時と通常時の違いも理解できずに,私も土俵に上がりたいと発言する女性首長や,ジェンダー論に議論を飛躍させる連中が権力を握っていたり,論理的なことやまっとうな意見よりも,声がでかい連中の意見が通ってしまうことが多々ある日本の絶望的なマスコミとリテラシーに現れているように思う.

 

 

問題点を冷静に指摘するだけであれば馬鹿でもできると思っていたのだが,テレビや新聞を見るとそんな最低限のことも出来ない輩で溢れているので本当に恐ろしいのだけれども,批評や批判をするだけでは大した価値はないと思っているので,高島屋というか百貨店への提言を少し綴りたいと思う.コンサルティングのご依頼をお待ちしている(関係記事:★なぜ伊勢丹は大阪から撤退したのか? 大阪・梅田は百貨店過当競争★

 

今回の「高島屋限定グッズ」炎上事件の一番の問題は,先着順という頭の悪い手法を取ったことである.百貨店の近年の業績不振は,自らの存在意義とブランド価値を大切にせず,販売戦略を軽視してきたことにあると考えている.先着販売のそもそも目的とメリットを理解していないから,このような愚策を進めることになる.

 

あなた方に百貨店としてのプライドがないのか? という話だ.例えば,イオンは定期的に先着販売や抽選販売で炎上事件を起こす.でも彼らはおそらく意図的にそれをやっている.イオンがターゲットとする顧客は,時間が余っていて,1円でも商品やサービスを購入したい,そのためには時間の価値かんて関係ない.という人々である.

 

だから,少しくらいブランドイメージが毀損しようが,ごく一部の顧客が離れようが,宣伝効果によりマス集客さえできれば良いと考えるイオンの戦略は正しいといえる.消費者にブランドロイヤルティを求めるのではなく,エサで釣る戦略.スーパーマーケットやショッピングモールなども暫しこの戦略を採るが,とにかく質より量であり,薄利多売のビジネスモデルが前提条件としてあるから成り立つ.

 

しかし百貨店はそうではないだろう.そもそも,十分な量を確保できない限定グッズを先着順で販売することにどんなメリットがあるのだろう? せっかく高島屋というブランドを信頼して,限定人形が販売されたのだ.その販売機会をブランディングできないから,このようなしょうもない事件が起こる.100個というごく少数の限定個数では,販売による顧客開拓は望めない.

 

逆に並んで購入できなかったり,今回のような買占め&転売の炎上が起きたら,高島屋の百貨店としてのブランド価値を毀損する.想像力とリスクマネジメントの完全な欠如だ.ではいったいどのような販売戦略を立てることが望ましいのか? 日本橋高島屋が同じ人形の販売方法を「先着順受付」から「抽選による販売」に変更すると発表したようなので,その点も考察しながら綴ることとしたい.

 

百貨店経営戦略

 

◆高島屋限定グッズ販売の効果的戦略&百貨店成長と復活に向けての処方箋◆

 

 

→日本橋髙島屋 中原淳一・ぱたーん版 Super Dollfie®Graffiti 女の子 ロリーナ ~ブラウス集 扉絵~ 販売方法について

 

プレスリリースの表題や内容に突っ込みどころが満載であるが,まずはファクトを整理しておこう.

 

  • 変更点:「先着販売→抽選販売」「お一人様2個→お一人様1個」

  • 案内事項:「応募用紙はお一人様1枚限りのお渡し」「支払いとお届けは自宅への代金引換配送」「当選者には事前郵便にてお知らせ」

 

これだけ話題になって炎上した件でこのようなプレスリリースを出す高島屋の残念さ.「教科書が読めない子どもたち」で指摘される前から,少なくない消費者は文章が読めない.これは馬鹿にしているのではなくて,購入者の読解力に期待をするような情報発信はすべきでなく,情報が整理された簡潔な情報を提供すべきである.何が言いたいのか?

 

この案内自体が問題点だらけであるが,一番の問題は情報が完結していないことにある.この案内を見て,わからなくて問い合わせをする人を発生させてしまい,無駄な対応稼働が発生するだろう.なぜならば「応募用紙の配布場所が記載されていない」からだ.おそらく日本橋髙島屋で応募用紙を配布するのであろうが,日本橋高島屋のどこで応募用紙が入手できるのか記載されていない.

 

配送料金以外に記載すべき事項があるだろう.そして,申込先が「本館1階係員にお渡しください」とある.エントランスの受付などの場所を指定するのではなく,とても曖昧な指定である.現場の混乱を少しも考慮していない酷いプレスリリースである.ここまで酷いとチェックしたのかどうかの話ではなく,高島屋の人材は大丈夫か? という話だ.マーケティングや広報宣伝の基本的スキルを備えた人材がいないのかもしれない.

 

なぜ「代引配送」するのか? 債権回収リスクをなぜ自社で負うのか?「当選者には事前郵便にてお知らせ?」たった100通と大した数ではないが,わざわざ郵便で当選通知を送るのは手間がかかるだけではないか? このポイントはリスクマネジメントではなくて,業務フローと想像力の問題でもある.限定グッズを購入する者は2か月後にもしかしたら気が変わるかもしれない.とするならば,先払いは優先すべき事項であるし,12.5万円もの商品の購入に代引だからクレジットカードも使えない.

 

特別な商品であるにも関わらず,この限定人形の販売を好機とせず,購入者に負担を強いることで,高島屋のブランドロイヤルティを下げる戦略を選ぶ残念さ.三越伊勢丹で50歳代以上はうん千万円の退職金を払ってでもリストラしたいという経営判断があったが,百貨店は不動産(売り場)を提供する以外の人材がいないのだろう.マーケティング視点が決定的に欠けている.

 

  • ①高島屋顧客への還元施策としての限定グッズ販売と新規顧客獲得

 

ではどうすべきであったのか? ぱっと思いつくだけでもいくつもの有効な戦略が考えられる.一つには限定商品の購入機会は「高島屋カード」の保有者に限定することである.新たに加入する者も購入資格を与える.楽天やマルイの金融事業の利益率の高さを例に出すまでもなく,自社クレカの利用者は貴重な収益源である.ロリーナ人形が限定100個だけとはいえ,高島屋のロイヤルティの高い顧客への特典として,これまで高島屋とは接点のなかった潜在顧客の発掘機会としてどうして活用しないのか? 繰り返しで恐縮だが,先着順販売でクレーム炎上させるなんて度し難いと言わざるを得ない.

 

  • ②顧客情報の積極的な収集(スマホ・ネットを活用した情報登録)

 

もう一つの戦略は,幅広く顧客情報を集めることが考えられる.①のクレカ顧客獲得がもっとも成果が見込めると考えるが,それとは別に幅広く個人情報を集める戦略である.顧客情報とは住所や電話番号といったものでも良いし(例えばイベント情報を郵便で送りたいならば住所),フェイスブックページやLINE@の活用などである.通常数十円のエンゲージメントコストがかかっているにしても,この限定グッズの応募をSNS登録の機会にすれば,数千人から数万人の獲得が見込めるだろう.

 

下衆な話であるが,転売益が見込めるというのをステルスマーケティングしても良いくらいである.これで拡散させて登録数の拡大を望める.ブラックな手法を採るかどうかは別にして,ロリーナ人形の限定販売という機会を,売上機会の拡大や顧客拡大に結びつけようとしない点が非常に残念である.そもそも百貨店は,富裕層との接点という超貴重な資産(データベース)を持ちながら,まったく活用できておらず,本当にもったいない.

 

おそらく経営改善などをコンサルに依頼して,数字の分析ばかりをして成長戦略が描けていないのだろう.百貨店の持つ企業な顧客データ(経営資源のアセット)は大いなる可能性を秘めており,弊社にご依頼いただければ成長戦略も描くことができる.まぁ口ではなんとでも言えるので,企画書を作成して持ち込むこととしたい.決裁権限と意思決定権限のある百貨店幹部の皆さまからの問い合わせもお待ちしている.

 

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