★「公務員就職」県庁 or 市役所 or 大企業の選択と就職「公務員内定辞退」問題の考察★

◆「内定辞退」問題の原因と対策 | なぜ学生は就職先に都道府県庁ではなく市役所を選ぶのか? | 公務員も新卒採用には苦戦◆

公務員の就職

 

「北海道職員の採用試験の合格者の6割前後が採用を辞退している」(→内定辞退6割 地方公務員採用の厳しい事情)。このNHKの取材記事が話題になっている。北海道庁職員という都道府県職員試験に合格し内定を得た学生が、札幌市や函館市といった市役所にも同時に合格し、就職先として市役所を選ぶのだという。北海道職員であれば、道の庁舎は札幌にあるものの、職務内容は全道にわたり、札幌市以外の勤務も10%~30%程度の割合であるだろう。一方で札幌市職員であれば札幌市内勤務が基本であり、函館市や旭川市などの出身者であれば、そちらで働きたいと考えるのも納得である。NHKの本記事では、地方自治体採用の現場で起きていることをわかりやすくレポートしているが、その背景や解決策についての言及はないため、公務員採用について考察することとしたい。

 

 

①公務員を就職先に選ぶ理由と根拠

 

基本的なことだが、仕事を選ぶ際の要素は大きく分けて3つである。

 

●「仕事内容」「給料(報酬)」「勤務場所(勤務先)」

 

頭の悪い輩や、この3つを手厚く提示できない経営者に限って「やりがい」や「働きやすさ」といった定性的でエモーショナルな指標を声高に叫ぶ。理解に苦しむが、自身が望む仕事内容と報酬と勤務場所で働きたい以外に何があるというのだろう? 仕事は非常に大変 or 勤務地は僻地 だが、給料は年収1千万円以上と提示するのであればわかる。好待遇な報酬も示さずに魅力的な仕事である、と根拠なきアピールをする企業がどれだけ多いことか。

 

話を戻そう。学生が就職先に都道府県庁よりも市役所を選択する。どちらも地方自治体の仕事であり、仕事内容にほとんど違いなんてない(生産性が問われない仕事だ)。職場の人間に恵まれるかどうか(運と縁)の方がずっと大きいだろう。給料に関しても都道府県職員と政令指定都市職員に待遇の違いはほとんどない。10万人以上都市職員であれば、都道府県職員との給与格差は微々たるものだ。ここで北海道庁、札幌市、函館市の職員の給料を見てみよう。

 

●公務員の大学新卒の初任給

北海道庁:178,200円

札幌市役所:183,031円 

函館市役所:178,200円

 

公務員の給料について批判的な意見もあるが、初任給は驚くほどに安い。40歳で平均給与月額は約40万円程度。つまり年収は600万円~700万円程度になる。公務員給与の特長は、ほぼ完全年功序列制であることと、役職定年がないこと、退職金が大きいことである。40歳から勤めるのであれば非常に魅力的な職業であるが、20歳後半は年収400万円台、30歳で年収500万円台に乗るというスローアップな報酬体系。給料について述べると長くなるので別の機会にまとめたいと思うが、40歳までは決して恵まれた年収ではない。

 

 

②公務員(自治体職員)は通勤時間が短く、地元で働くには最高の選択の1つ

 

次に勤務場所。地元や実家、その他の理由で明確に住みたい場所が決まっていれば、市役所職員は通勤の面で非常に恵まれた環境にあると言える。自治体職員は、自宅から自動車通勤で30分以内や、徒歩や自転車で15分といったケースが多く見られるからだ。比較してみればこれがどれだけ恵まれたことであるかがわかる。東京都内に勤務するサラリーマンの自宅から会社までの片道の通勤時間は平均58分である(「通勤」に関する実態調査)。

 

これは平均値であり、中心区に住んでいる勝ち組サラリーマンは30分以内が大半となる。一方で23区外や他県から通勤している人間は90分というのもざらだろう(余談だが私は新幹線通勤経験者)。仮に通勤時間が片道45分短くなれば、1日90分、1週間(5日勤務)で450分、1ヶ月(20日勤務)で1800分の削減になる。時間にして30時間だ。通勤時間を有効に使えるかどうかは本人次第であるが、月30時間という時間を余分に通勤以外の時間に使えるというメリットは大きい。

 

だから、学生が就職先に都道府県職員を選ぶよりも市役所職員を選ぶことは、妥当な選択であり、地元志向の学生の意向を変えさせることは難しい課題である。さて、その対策について本記事では迫っている。秋田県が実施している県職員の地域限定職員という制度。勤務先を秋田県庁舎(秋田市内)に限定すれば、秋田市や近郊に住んでいる、住みたいと考える者に対する就職への大きな動機付けになるだろう。秋田県では高卒程度の一般事務を対象としているとのことだが、大卒者へも対象を拡大するとともに、他の都道府県も見習うべきだろう。北海道であれば、総合振興局の配属になり、宗谷や根室、檜山の振興局に勤務ということもあり得る。北海道に限らず、誰が縁もゆかりもない田舎の土地で働きたいと思うだろう?(その土地の出身者や居住者、希望者を除く)。

 

 

③公務員の内定辞退にどう対応すべきか?

 

滋賀県では募集定員を確保できず、2次募集を実施。県の人事担当から直接祝福の電話をかけるとともに、知事からお祝いの手紙を送ることで内定辞退を防ごうとしているという。さすが公務員の仕事である。やっつけ感が半端ないし、合理的要素が欠片もない。開いた口が塞がらない程の効果が見込めない施策だ。私が前職の大手通信企業で採用担当をしていた際は、経費を惜しまず食事に誘って自社の魅力をPRしたり、内定者間の結束を強めるため懇親の場を頻繁に設けた(ちなみに男子学生は高級焼き肉を食べさせてお前みたいな優秀な人材が弊社には必要だと語れば良いし、女子学生にはいかにワークライフバランスが優れ長く安心して働ける会社かをアピールすれば良い)。

 

それでも、優秀な人材から順番に内定辞退をしていく。当然だ。自社よりも給料が高い企業(総合商社やメガバンク)から内定を得られれば、自分だってそっちを選ぶだろう。だから、内定辞退を防ぐための引き留め策は、自社が優れている根拠を定量的に示しつつ、感情に訴えかけねばならない。某企業では、内定者の中でもどうしても欲しいトップ人材だけを選別して、個別に社長や役員の個別懇親会を実施することで、入社時からのエリート選抜を実施するなどの施策を実施していた。それを知事からの手紙などと、なんの価値もない紙切れ一枚で入庁を促すなど、生産性のない公務員組織が考えそうなことである。だからといって報酬(給料)を上げることは困難であり、内定者フォローに経費を使えない中では打てる手は限られるため、安易に非難することは無責任かもしれない。

 

そもそも、国家公務員採用総合職試験(キャリア官僚)を除いて、自分の能力に自信があり、意欲がある人材(主観的か客観的であるかは別)が積極的に公務員を就職先に選ぶことを期待すること自体に無理がある。どうしても地元で働きたい、勤務場所を限定したいという目的以外で選ぶ理由は少ないだろう。スキルと意欲さえあれば、他にいくらでも稼げる仕事と職が世界には溢れている。もちろん、安定性や永遠の年功序列など、公務員ならではの大きなメリットもあるが、優秀な人材にとっては消去法的な選択となってしまっている現状の公務員就職が限界(優秀な人間が公務員に少ないという悪夢)に直面している。次回は公務員と大企業の採用競争について考察することとしたい。

 

 

●北海道庁の内定辞退率は約63%!半数以上の内定者が辞退する異常事態(追記)

 

日経新聞で県庁や同庁職員の内定辞退の続報があったため、追記して考察することとしたい。

 

→自治体悩ます内定辞退、北海道庁は6割 追加募集も

 

本記事の要旨は以下の通り。

・北海道庁の採用予定数「140人」に対して、合格者数「391人」。つまり、2.8人に一人が北海道庁に就職すると想定して合格(内定)を提示した。

・北海道庁の内定辞退率は2013年度の約19%から2016年度の約63%にまで上昇。つまり、100人に内定を出しても、37人しか入庁しない事態になっている。

※391人×37%=144人となる。

 

危機的な水準にあると思う。北海道職員を辞退した学生は、札幌市や函館市といった地元の市町を選んでいるという。岩手県庁でも「広域での転勤がある県庁ではなく、地元にとどまれる市町村を選ぶ人が増えている」とのこと。人気民間企業に合格者が流れてしまうケースもあるだろう。

 

採用側も馬鹿ではないので、広域の転勤ある県庁を避けて転勤がなく勤務地がほぼ確定している市役所を選んでいるという問題は認識している。にも関わらず、改善意思が感じられず、まともな対策をするつもりもなさそうなのは、流石のお役所仕事だと感心させられる。

・北海道庁は合格発表直後に保護者を対象に仕事の魅力を訴えるセミナーを開催。
・神奈川県は知事の手紙を添えて合格通知を送り、知事が自ら若手活用策などを語りかける合格者向け説明会を開催。
・岩手県は入庁する意欲を春まで持ち続けてもらおうと交流サイトを通じ、若手職員とだけでなく、内定者同士でもコミュニケーションを活発にすることで「仲間意識」を醸成して「囲い込み」を図っている。

県職員の広域への転勤を懸念して、市役所職員を選択しているにも関わらず、感情的に訴えたり、仲間意識の醸成(笑)などと、抜本的な対策を打とうともしない。何の問題解決にもならず、内定辞退の防止にもつながらなそうなところが、気持ち悪くてため息が漏れる。

 

改善策をいくつか提示しようかと考えたが、少し頭の働く大学生ならいくらでもPDCAを回せる程度の問題に言及するのも不毛であるし、そもそも改善する意欲がない組織や団体に、いくら訴えかけても無駄であるため省く。それでも、どれくらい役所が硬直的かわかっていただけるのではないだろうか?

 

そして、内定辞退問題は民間企業にとっても他人事ではない。県庁職員の入社率が50%を切るケースもあるという事態を自社に置き換えて想像するといい。御社は辞退率を適切に計算できているのか? ということだ。県庁という人気の就職先ですら、辞退率のUPに苦慮している中、御社に学生がどれだけ入社してくれると思うのか? という話だ。大して魅力のない企業に限って自社への自己肯定意識が高く、内定辞退率を甘く見積もる。

 

半分くらいは入社してくれるだろうと希望的観測に基づき「内定提示」をして、1割しか入社しなかった(内定充足率が1割)という笑えないケースも多々ある。優秀な学生は複数の内定を得て、そこから冷静に取捨選択を実施している現実を捉え、どうすれば欲しい人材を確保できるのか? 生産的な議論をしていただければと思う。弊社へのコンサルティング依頼もお待ちしている。

 

 

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