★「大阪百貨店戦争」伊勢丹は大阪から撤退し阪急&阪神vs大丸へ.大阪駅/梅田駅は日本一の百貨店競争地区★

 

「JR大阪伊勢丹の撤退理由は戦略なく大阪の過当競争市場に進出した経営幹部の判断ミス」「大阪伊勢丹の失敗は大阪駅の動線(人の流れ)を甘く見た当然の帰結.損失の代償は大きい」「圧倒的なブランドを誇る梅田阪急本店は富裕層のロイヤリティをキープ」 「大阪大丸はデパ地下も武器にポケモン他のユニークネスで勝負」 「阪神百貨店は大阪駅南の最強の立地でデパ地下改装オープンを果たし庶民の胃袋と購買意欲を鷲掴み」 「グランフロント大阪の竣工とウメキタ再開発で大阪駅北口のビジネスチャンスは拡大」 「日本一の百貨店激戦地区である大阪駅&梅田駅から考察する百貨店ビジネス」

 

大阪駅百貨店競争

 

●阪神梅田本店が改装オープン 庶民最強デパ地下&立ち食いフードコート復活!(2018年7月追記)●

 

 

みんな大好き阪神百貨店大阪本店!2018年6月に改装オープンいたしました.阪神百貨店のデパ地下といえば庶民の台所.百貨店のデパ地下であるにも関わらず,立ち食いのフードコーナーがあり,リーズナブルにおいしい食事が楽しめる素敵なお食事処.定番のイカ焼きはもちろんのこと,大阪初出店の店舗もあり,さらに魅力を増したラインナップでリニューアルです.あぁ行きたいなぁ.

 

 

阪神梅田本店の魅力は上の日経ビジネス記事をご覧になっていただくとして,本稿は2014年1月に綴った大阪伊勢丹の撤退を分析&考察したビジネス記事です.どれだけ大阪伊勢丹がビジネスとして稚拙であったのか,百貨店ビジネスに導線がいかに重要であるのか,主にマーケティングの観点から綴っています.外国人観光客によるインバウンド需要が2018年の4分の1程度であった2014年の記事なので,少々情報は古いですが,現在業績が絶好調な大阪駅の百貨店市場で,なぜ大阪伊勢丹が撤退に追い込まれたがを詳しく綴っています.

 

 

ビジネスの成否はタイミングによるところが大きいとはいえ,いかに伊勢丹のマーケティングが無能でロクな分析を実施するでもなく,東京人には大阪は理解に苦しむというような,フィーリング合わへんわみたいな適当なビジネスをした結果がどうなるかを示してくれる稀有な事例の考察ですので,ご覧になっていただければ幸いです.なお,弊社はマーケティングと広告が専門ですので,ご依頼もお待ちしております.

 

 

●大阪駅から伊勢丹が撤退.楽観的見通しで投資をして傷だらけの閉店へ●

 

 

2014年1月20日~22日にかけて,大々的に報道されましたが,「JR大阪三越伊勢丹」(店名長ぇよ)が業績不振により売り場面積を半減し,2015年初めに改装開業(ルクアと連携)するとのNEWSが流れました(※その後ルクアイーレとなり,好評な「バルチカ」は拡大中).新聞やTVでは詳しい報道はなく,在阪の方以外(特に東京のみなさまや伊勢丹ブランドの強さを知る全国の百貨店関係者)はなぜ大阪伊勢丹がこれほどまでに苦戦を強いられ,赤字を垂れ流しているのか? 不思議に感じているのではないでしょうか? そこで,大阪伊勢丹のOPENから苦境を見続けつつテパ地下に通い続けたNAGOYANZ代表が独自の観点で開設いたします. 

 

にしても新聞もTVも報道の質が低くて酷いですね.つい先日,石原慎太郎元知事が科学が風評に敗北するのを許してはならない(`・ω・´)キリッ という名言を発さられましたが,この国の問題は,テレビや新聞の報道が,科学的根拠や客観的な分析のないままに,デマや風評レベルの内容で配信するとであると考えています.腐ってもマスコミは絶大的な影響力を持ちますし,大多数が新聞とテレビを疑わず信じてしまうことを考えると恐ろしい限りです(>_<).話がそれましたが,外から見ているだけではわからない「大阪百貨店戦争」の実態に詳しく迫りたいと思います. 

 

●大阪伊勢丹の運営はJR西日本と三越伊勢丹の共同出資●

 

先ずは大阪伊勢丹の特殊な事業形態から見ていきましょう.なんでこんな糞長い店名になっているかと言えば,第一に,三越と伊勢丹の経営統合に伴い「三越伊勢丹HD」が誕生したことと,第二にその三越伊勢丹HDとJR西日本が共同出資したために,運営が「JR西日本伊勢丹」であることによります.そのため,冠にJRが付き,大阪の地名が付き,三越伊勢丹という店名が組み合わさってこのようなネーミングになった次第ですね.東京海上日動あんしん生命保険会社と東京三菱UFJ銀行の次にセンスのない名前だと思います(笑) .日本企業の生産性のなさはこんなところにも現れていますね!

 

ただ,JRと百貨店の共同出資,共同運営は以前より実績の上がっている形態であり,そのアクセスの利点からJR駅直結デパートは最強とも呼ばれていました.「JR名古屋高島屋」や「JR京都伊勢丹」は成功事例として有名であり,JRと百貨店の共同出資のデパートとしては,今回の業績不振がはじめての失敗であると言えるでしょう. 

 

●大阪百貨店戦争 大阪駅(梅田地区)は日本一の百貨店集積地●

 

一番多く指摘されているポイントがこれでしょう.過当競争市場に参入した無能さ.個人的にはもう一点決定的な理由があるのですが,それは後ほど紹介するとして,梅田近辺の百貨店&小売りは間違いなく日本一の激戦区であり,それゆえ百貨店戦争と呼ばれています.どれぐらい過当競争であるのかをデータに基づいて見てみましょう.なお,データ出典元は「日本政策投資銀行」(DBJ)の「大阪における百貨店業界の展望」および日本経済新聞社の「2012年度百貨店調査」によります. 

 

↓大阪駅(梅田エリア)の百貨店売場面積

 

 店舗名  売場面積(店舗面積) 
 阪急うめだ本店  9.6万㎡
 阪神百貨店梅田本店   5.3万㎡
 大丸大阪梅田店  6.2万㎡
 JR大阪伊勢丹三越  5万㎡
 計  26.1万㎡

 

<参考>新興大規模商業施設: 

・ルクア:2万㎡ ・グランフロント:4.4万㎡ 

 

上記の表の通り,大阪の4百貨店(阪急・阪神・大丸・大阪伊勢丹)の売場面積の合計は「約26.1万㎡」です.ルクアとグランフロントを加えると30万㎡を超えます.これがどれくらいの規模であるのか,広いのか狭いのかを理解するために,東京と比べて見ましょう.新宿地区の4百貨店(伊勢丹・高島屋・小田急・京王)の売場面積の合計は「約21.2万㎡」であり,大阪伊勢丹まるまる1店舗分,大阪駅近辺の方が百貨店の店舗面積が広いということになります.考察は後ほどにして続けて売上高を見ていきましょう. 

 

●大阪駅(梅田エリア)の百貨店売上高(2012年度)●

 

 店舗名  売上高(円)   全国順位 
 阪急うめだ本店  1,447億円  4位
 阪神百貨店梅田本店   892億円  13位
 大丸大阪梅田店  628億円  26位
 JR大阪伊勢丹三越  303億円  62位
 計  3,270億円  

 

<参考>新興大規模商業施設: 

・ルクア:357億円  ・グランフロント:400億円(2013年度売上目標) 

 

こちらも比較のために新宿地区の4百貨店と比較してみましょう.伊勢丹新宿本店:2,368億円(全国1位),小田急百貨店新宿本店:886億円(全国14位),京王百貨店新宿本店:804億円(全国19位),高島屋新宿店:637億円(全国25位)となり新宿地区の4百貨店の売上高合計は「計4,675億円」となります. 

 

●大阪の経済が伸びる余地は小さく過当競争で各社疲弊●

 

上記のデータが示す通り,大阪駅(梅田地区)の方が百貨店の店舗面積は広いにも関わらず,売上高は「1,400億円」少ないということが見えてきました.これには様々な理由があるでしょうが,例えば人口で比較してみましょう.   

 

東京都の人口が約1,300万人.大阪府の人口が約880万人ですので人口比で東京の約67%.より具体的に駅の乗降者数(一日平均)比較すると,「新宿駅:326万人」(西武新宿駅含む),「大阪/梅田駅:153万人」(JR85万人,阪急52万人,阪神16万人)となり,駅利用者で新宿の約46%の規模の商圏ということになります. 

※一概に比較するのは少々乱暴かもしれませんし,他の商業圏からの影響もありますので,分析データが不足していることはご容赦ください. 

 

そのため,過剰出店による競争激化は甚だしく,近隣の人口が増えるか,遠隔地域の客を誘導する以外に商圏市場規模が伸びる可能性は限りなく低い.これは,関西地区の景気が低迷し,大阪府民の収入が増えていない(財布が膨らんでいない)中,甘い見通しによる拡大路線が限界を迎えたと言えるでしょう.結果,オーバーストアで各社ともに疲弊し,他店から客の奪う以外に売上を増やすことはできない状態になってしまった模様です.ふむ,ケーススタディとして面白い教材になりますね.大学時代にこういう勉強をしたかった(>_<). 

 

●JR大阪伊勢丹の最大の敗因は人の流れの重要性を軽視したこと●

 

前段までに紹介した内容が大阪百貨店戦争の数字に基づいたデータ&分析になりますが,これだけでは何故「JR大阪三越伊勢丹」だけが一人負けをしているのか? の理由が説明できておりません.オーバーストアであるにも関わらず「ルクア」の業績は好調で目標を上回る売上を達成しており,大阪伊勢丹の半分の店舗面積でありながら売上高では勝っている.いくら伊勢丹のブランドが大阪でネームバリューを持たず,品揃えに難があるとしても,この惨敗はどういうことなのでしょう?

 

●JR大阪伊勢丹の場所は残念 店舗の競争力は立地だけでは図れない●

 

大阪の百貨店

 

この疑問に一言で回答すると,JR大阪三越伊勢丹は人の移動が残念な場所に店舗を出店したために集客に大苦戦しているといえます.来店客に訴求する商品力以前に集客がまったく出来ていない.これがすべてでしょう.この状況は実際の大阪駅&梅田駅の人の流れと客の入りを目の前にしないと,なかなかわかり辛いのですが,図で説明したいと思います. 

 

どれだけ百貨店が密集しているのかがご確認いただけると思います.半径300m以内に4百貨店と2大商業施設.ここで楕円と矢印に注目してください.大阪駅(梅田エリア)の商業エリアと人の流れは大きく分けて以下の3つです. 

 

【大阪駅南】大阪駅から南に向かうと北新地というキタの代表する飲食店街となっています.一応,西の銀座とも呼ばれているようです. 

 

【大阪駅南西】大阪駅からの南西にそびえ立つのは西梅田の高層ビル群.キタで一番のビジネス街であり,各種企業やホテル,商業施設等も林立しています.汐留や西新宿のイメージ. 

 

【梅田駅東】阪急東通商店街を中心にキタを代表する歓楽街.北新地とは異なり,飲食店だけではなく,娯楽や風俗等の店舗も展開.渋谷と歌舞伎町を併せたようなイメージ. 

 

 

駅からの代表的な導線は矢印の通りです.人の流れのあるエリアはそれだけ集客のポテンシャルが大きいので,自然と店が集まってきます.人々の導線が商業圏を形作ると言っても過言ではないでしょう.

 

●集客力や商品力も重要であるが百貨店に一番重要なのは販売機会(客数)●

 

にも関わらず,「JR大阪三越伊勢丹」はまったく人の流れがない場所に出店しました.確かに大阪駅の改札から徒歩数十秒と立地は最強です.しかし,大阪駅と梅田駅の利用者は日常生活においてそちらの方向には用事がないため赴かない.つまり「JR大阪三越伊勢丹」に行きたい! という積極的なユーザしか顧客とならなかった.この出店場所の選択ミスが「JR大阪三越伊勢丹」の最大の失敗要因であると断言します. 

 

仕事終わりにショッピング,買い物ついでに晩御飯の買い物 等,人々の生活における潜在購買意欲を刺激する機会がまったくないということが,販売に致命的であることはご理解いただけるでしょう.街に一つしかデパートがないのであれば,そこを目的地として人は足を向ける.田舎の大規模ショッピングセンターなんかが良い事例ですね.だがしかし,大阪駅エリアはオーバーストア状態で,生活の導線の中にデパートが1つないしは2つ3つある.わざわざ導線を離れて新しく出来た百貨店に足を向けるでしょうか? 

 

もちろん最初は珍しいもの見たさもあって訪れるかもしれない.でもその次は明確な目的意識がなければ赴かなくなる.ブランド品や服飾など,目的の購入対象が決まっている場合なら別ですが,それらはたまに購入するものであり,人々の普段の購買意欲を刺激するのは,衣食住を満たす商品であります. 

 

だから各社それぞれにデパ地下の食料品売場に力を入れる.個人的にはデパ地下を比べれば,阪神百貨店の品のない雰囲気や,いまいちな品質&値段に対し,大阪伊勢丹の食料品売場が負けているとはまったく思いませんが,残念ながら関西人にはあの整然とした綺麗な売り場は響かない.結果,私のような導線を変えてでも大阪伊勢丹で買い物をしたいという一部のロイヤルユーザ以外は来店して貰えない.救いがないですね….

 

●ハードウェアの失敗をソフトウェアで解決することは困難●

 

無能な経営者や管理職に限って,ハードウェアの失敗をソフトウェアで挽回できると考えます.しかし,現実にそれはないと断言しましょう.ソフトの工夫や革新で成功できるチャンスはあるけれども,残念なハードにのっている限り,ソフトで挽回することはできないと.実際に,JR西日本伊勢丹は京都伊勢丹が絶好調であるにも関わらず,大阪伊勢丹が原因で100億円を超える債務超過となり,再建策が発表されましたが,見通しは厳しいと言わざるを得ないでしょう.ルクアとの連携や商品力の強化,テナントの入れ替え等の対策をし,改装オープンをするとのことですが,立地と導線が悪い以上,他の百貨店以上の競争力を発揮するのは相当に困難です. 

 

きっと,本社から到底達成不可能な目標が現場に課されることになるのでしょう.そもそもハードが悪いにも関わらず,そのハードに化粧を施し,ソフトで解決しようとする試みは無理があります.明確な敗因分析をしないまま,問題の根本的要因(システムエラー)に対策を打たず,目の前の課題にのみフォーカスして解決策を実行する.えぇ,よくある光景ですね.結果は現場の従業員の士気低下と傷口拡大による企業価値の毀損です. 

 

大阪駅北&北西の「梅田北ヤード」(旧梅田貨物駅跡地)の再開発さへ進めば現在の導線も抜本的に解決されるでしょうが,それまでは戦線を縮小して辛抱強く耐えるか,現実を直視し撤退策を検討するのが英断だとは思います.しかし,JR大阪三越伊勢丹のデパ地下ファンとしては,ここから奇跡の復活劇を遂げていただいて,批判ばかりしている輩(自分を筆頭に)を是非見返していただくことを期待して,引き続きウォッチしていきたいと思います.ちなみに地下2階のジェラートは絶品ですので,フルーツたっぷりなジェラートを食べて大阪伊勢丹の復活に貢献しましょう! 

 

 

●外国人観光客の激増でインバウンド市場は拡大し大阪の百貨店は過去最高の売上へ(2018年7月追記)●

 

 

訳知り顔で大阪の百貨店は厳しいなどと語ってしまいましたが,アジアを中心とする外国人観光客のインバウンド消費により,大阪の百貨店は業績絶好調な状況です.いやはやお恥ずかしいですが,天下の日本政策投資銀行さんも「大阪における百貨店業界の展望」で厳しさを増す大阪の経済指標や,ゼロサムゲームで難波と心斎橋の百貨店の売上高は減少する見込みという予測を出していたくらい(大ハズレ)ですので,ご容赦ください.外国人観光客の消費が業績好調の理由のすべてと言っても過言ではないくらいのインバウンド様様です.

 

心斎橋&難波&阿倍野を含む2017年の大阪の百貨店売上高は8000億円超え.2014年と比べて1.5倍に近い伸びを記録しており,誰がこの活況を予測出来たでしょうか? ウメキタの再開発も控え,大規模ホテルの開業も続々と予定されており,大阪伊勢丹も出店があと3年遅ければこの波に乗れたのにと忸怩たる思いでしょう.いずれにせよ,百貨店のビジネスモデル自体は限界を迎えており↓

 

 

インバウンド需要の一本足打法は三越が銀座でやらかしたようにボラティリティが大きく難しい運営が余儀なくされますが,地方から百貨店も人も撤退することが確実視される中で,大阪は数少ない成長市場なため,ギリギリ生き残っていけるでしょうか.なお,改めて分析をしようかと思いましたが,ハーバービジネスオンラインより充実したレポートが公開されておりましたので,そちらを紹介いたします.分析は数学が得意な人間がやり,ビジネスアイディアやビジネスモデルの検討をご一緒できれば幸いです.