★プロパー社員が使えないは本当か? 正社員が無能と嘆く絶望的な日本の人事への処方箋を提言★

 

“どうしてプロパー社員は使えないのか?”

“無能な経営者が人材不足を声高に叫び,社員の再教育を諦める”

“日本の雇用制度(新卒採用→年功序列→終身雇用)の制度破たん”

 

 

※執筆中 

 

『日経ビジネス2018年2月19日「社員の賞味期限」増える「歳だけ重ね人材」』

この特集が実に興味深く面白い記事であったので,レビュー&考察することとしたい.

 

本特集の問題提起の要点は次の通り.

・プロパー社員に頼らず、有能な人材を外から獲得する企業が増えている.

・企業の中から定型的な仕事(マックジョブ)が減り,創造性の高い仕事(クリエーティブジョブ)が増えた結果,社員としての賞味期限を維持するのが難しくなった.

 

日本企業は,歳だけ重ねた使えない人材だらけではないか? あなたは大丈夫か? という痛切なサジェスチョン.うん,冒頭から辛辣なメッセージで面白い.かつ,この問題提起も的を得ているように思う.私は「パレートの法則」いわゆる「80:20の法則」を支持しており,企業というか社会は「普通の人&ぱっとしない人8割」と「優秀な人2割」で組織されていると考えている(もちろん,その母数を構成する人材の質は千差万別であり,組織の戦闘力は母数の能力指数の和や乗になるだろう).

 

しかし,高度にグローバルとテクノロジーが進化した現代社会においては,アウトプットやバリューの点において,これが「90対10」だったり「99対1」になりつつある.富の偏在と一緒だ.強者(有能なごく一部の人材)になれない側(自分もそうだw)にとってみれば,非常に苦々しい話である.

 

それでも,弱肉強食の現実を否定するほど愚かではないし(いっぱいいるよね,現実を直視できない残念な人),逃避しても問題解決にはならず一歩も進めないので,この現実を事実として捉え対策を打たねばならない.問題意識は同じであるが,日経ビジネスの仮説や結論と,弊社の意見はまるで異なるため,比較・検証するとともに,オピニオンとして提言するこことしたい.

 

 

1.再教育するには手遅れなくらいに日本の正社員は無能(らしい)

 

本特集では,PART1の先進企業事例の紹介からはじまる.ヒューレットパッカードの社員リストラ&外部から優秀な人材獲得による劇的な業績改善を実現したこと(7年で1.5倍成長.売上兆円規模の企業でこれは凄い)を解説している.人材流動化戦略の成功ケースだ.

 

次に日本企業での取り組み事例の紹介.パナソニックやデンソーが中途者採用を強化していることや,経営者や役員などの管理職の求人件数が,2014年2月に比べて約2.9倍増えていることなどを示している.

 

他の企業の成功事例を紹介した後,ここで「なぜプロパー社員を再教育しないのか?」という根本的な問題を問いかける.既存の社員を有効活用すれば良いのでは? という疑問である.そうだ!無能な経営者連中はこの視点が欠けているよね,と大多数の読者であろうプロパー社員をぐっと引き込む.記事構成が上手くて感心する.

 

私は人材流動性の強化と中途人材の強化は大いに賛成である.使えない中高年が多すぎる.それでも,中途人材の積極的活用は,プロパー社員のモチベーションにも影響するし,人員整理するにも割増退職金を準備せねばならない.日本では無能な中高年を追い出すコストが高い以上,正社員を活用する方がずっと合理的では? という認識があったので,興奮しながら読んでいた.

 

パナソニックは本社から他部門や子会社に出向する社員には,60歳まで給与の差額を補てんするという.三越伊勢丹の早期退職といい,手厚くて眩しくて嫉妬しちゃうね.日本の雇用制度というか慣習では正社員の解雇は基本的にできないから,長期勤続の正社員をリストラするには大きな負担がかかるのだ.

 

本誌では指摘していないが,中途採用のための費用も莫大である.転職仲介企業に採用一人あたり何百万円~千万円単位で経費が必要な場合も少なくない.その経費の妥当性や費用対効果を検証できないくらい経営者や人事が無能なケースが多いから,仲介会社はホクホクである.

 

さて,従業員を再教育すれば良いのでは?という問題に対して,日経ビジネスが示した仮説は次の通りだ.一言一句間違えないように記す(以下引用).

 

 

少なからぬ企業が「キーマンほど生え抜きより外様」にかじを切り始めたのはなぜか。

人材育成の専門家を取材し、本誌がたどり着いた仮説は次の通り。

「大卒総合職を中心とする日本企業のプロパー社員をいくら今から教育しても、新しい時代に適応できる人材にはなりにくい」

という残酷な事実に先進企業ほど気付き始めたから、というのがそれだ。

 

 

やべーよ.凄い仮説をぶっこんできたな!日経ビジネス.勘違いしないでいただきたいが,馬鹿にしているのではない.プロパー社員は再教育する価値は(ほとんど)ない.と言い切った清々しさには惚れ惚れする.それでも,これはずいぶん強引な仮説設定ではないか?

 

この仮説を元にどう議論していくのか,記事を繋げていくつもりなのだろうか? 興味深い.なぜならこの仮説は,新卒採用の正社員を否定する論理であるからだ.日本型雇用制度,つまり「新卒一括採用→年功序列→終身雇用」は失敗であると宣言しているのにも等しい.

 

私も日本の年功序列制度は機能不全に陥っていると考えている.腐っているといっても良い.同一労働同一賃金の導入を肯定し,裁量労働制度の導入&普及を支持している.でもまさか,日経ビジネスという日本最大のビジネス誌が指摘するとは思わなかったため驚いた(この勇気を評価したい.仮説は乱暴であるし,仮説設定と意見が間違っていると思うが,プロパー社員が無能と断言したことは意義がある).

 

 

2.どうして日本の人事は社員教育に失敗したのか?→経営者が無能だからでは?

 

PART2は使えないプロパー社員の量産のメカニズムの分析である.

 

「独創性に富んだ社員が育たない」「幹部候補が成果を上げられない」「多くの社員が成長せず、そもそも後任候補すらいない」

 

大企業の経営者が述べる意見だそうだ.この冒頭文にずっこけてしまった.無能な経営者が自社の人材不足を嘆く.M&Aや事業の選択と集中で失敗してきたのは君たちだろ? 自社人材の能力不足は,あなた方経営者の人材教育の失敗では?

 

原因分析と検証が正しくできず,解決すべき課題を適切に設定できず,学び直しとか馬鹿げたことを言わないだけまだマシかもしれないが,経営者が自社社員の能力を嘆くのは,悪い冗談にしても性質が悪いのに,堂々と公言する阿呆が少なくないから恐ろしい.

 

それでも日経ビジネスの要因分析は的確にできていると思う.大多数のプロパー社員には「知識がない,能力がない,精神力がない」そして仕事の本質が変化したのについていけないという.マックジョブという定型業務が減り,クリエーティブで差別化できる仕事が重要になっているとの指摘だ.確かに,定型業務はIT化により効率化することができる.この点は概ね賛成である.

 

しかし,ここからの展開が実に酷い.以下に引用する.

 

“クリエーティブジョブ”を遂行する上では「マックジョブに取り組む上で威力を発揮した知識や管理能力、経験はほぼ無力」(経営コンサルタントの木村氏)だ。重要なのは、無から有を生み出す感性でありセンス。問題なのは、そうしたセンスや勘は持って生まれた素質で、後天的に身に付けることが難しいことだ。

 

「あらゆる能力は、経験を積むにつれ遺伝による差が生まれる。クリエーティブな才能はほとんどが潜在的な素質によって決まる」

 

~中略~

 

そう、日本企業の社員、とりわけ大卒総合職は「ほとんどがマックジョブ向き人材」(ヒューマンロジック研究所の古野俊幸社長)なのだ。

 

大卒総合職を否定して,企業の人材戦略に「行動遺伝学」の知見を持ち込んできた.やべーな.まさか企業経営の人材戦略に遺伝学をパラメータとするなんて,信じられないよパトラッシュ.

 

頭の弱いリベラルはここで「差別」だの「ポリティカル・コレクトネス」を叫ぶだろう.彼らが無能なのは,物事の根本的な問題や原因を適切に認識できないことにあるから救いがない.そうではない.生まれつきの能力による差異,つまり,才能には圧倒的な違いがある.これは事実だ.

 

私は運命論者で,世の中は生まれつき不公平につくられており,キケロが述べた通り,人間の一生を支配するのは運であって知恵ではない.と考えているくらいには,才能や遺伝が人生や社会に影響する大きさに,絶望して嫉妬する立場の一般人だ.才能は恐ろしい,うらやましい.例えるなら,稀有な悪魔の実を食べた人材や生まれつきの能力者に,パンピーが勝てるはずがない….

 

 

しかし,人材戦略において遺伝学を持ち出すのはありえない議論であり,理解に苦しむ.その議論では答えは出せないし,論理破綻するだろう.なぜなら,大企業は優秀な人材を最初に獲得したのではないのか? 新卒採用で選抜してその時点で有能であると評価した人材がいっぱいいるのではないのか?という話になってしまうからだ.

 

マックジョブ向きの人材とクリエイティブジョブ向け人材の違いを本誌では長々と解説しているが,ではその優秀な人材をどう見つけて採用するのか?という議論をしなければ,この才能論は意味を持たないし,そもそも,中途採用ではなく新卒採用で優秀な人材を雇えば良いのでは? その優秀なクリエイティブ人材はどうして転職するのか? 一般的な日本企業にクリエイティブ人材を活かせる仕組みや,雇用契約,報酬体系が示せるのか? などなど疑問だらけである.

 

問題は,能力やアウトプットではなく,社内政治で出世が決まるような人事システムであり,機能していない成果報酬システムであり,そもそも根本的にモチベーションとインセンティブの設計が狂っているから,無能なサラリーマン社長が続出し,ドブにカネを捨ててきたのではないか? 数えきれないくらい失敗ばかりしているけれども,少しだけ事例を示そう.

 

・デューデリジェンス? M&Aを実施した後に実施します!(`・ω・´)キリッ(※東芝 等のケース)

・俺たち技術力に自信があるもの.仕様書と契約書のリーガルチェックはわからないけれども(※IHI,三菱重工,大成建設 等のケース)

・グローバルって響きに憧れた(※日本郵政のオーストラリア企業出資 等のケース)

・ライバル企業に先行したいから高くてもいいんだよ(キリンビールのブラジル事業出資 等のケース)

・金余ってるからなんでも買っちゃえば?(NTTグループの海外投資の1兆円を超える特損 等のケース)

・金融商品を理解せず,市場が破綻する直前に手を出した(サブプライムショックで「最後のカモ」と笑われたみずほ証券 等のケース)

 

このような事態が発生している.記憶力の悪い自分でも,日本企業のM&Aの失敗事例とは30社以上すぐに上げることができそうだから,実際には数えきれないくらいに国富を海外流出させているんだろう,恐ろしい.センスのなさを嘆くのであれば絶望的である.

 

常軌を逸した長時間残業で創造力不足を強引にカバーしようとした結果、現場は疲弊。取り返しの付かない結果につながることになった。
~中略~
日本企業の現場で精神疾患者が増えているのも、マックジョブ型人材が無理してクリエーティブ業務に従事しているから、との指摘がある。

 

続いて,過労や精神疾患を業務内容が変わったからとの指摘までしている.一言一句否定するつもりもないし,面倒なので避けるが,過重労働は効率性を評価しない日本企業の雇用&評価システムそのものの制度疲労であり,精神疾患は管理職に向かない人材を登用することや,日本企業のマネジメントが機能していないからではないか? 仕組み(システム)不全を運用で解決しようとするのは最悪の選択だ(みずほのシステム見てみろよ.システム不備を運用でカバーしようとする考えはありえない)それを創造的な仕事にマッチしていないなんて言葉で説明して欲しくない.

 

メンタルヘルスについてはセンシティブな問題であるため言及は避けたいが,非正規雇用ならすぐに契約終了,つまりは雇用破棄されるところ,正社員に対しては,36カ月以上に渡って100%の給料を支給する企業もある(一定期間減額して支給するのが一般的).有効活用しようって考えても不思議ではない.

 

既に「歳だけ重ね人材」は業種を問わず、社員の相当な比率を占めている、という声もある。その根拠の一つが、1997年創業の動画配信サービス企業、米ネットフリックスの事例だ。
同社は2001年、ITバブルの崩壊と同時多発テロの影響で経営が悪化。約120人の従業員のうち、パフォーマンスの低い社員、下から3分の1を解雇した。しかし、現場はパンクせず、むしろ“無駄な人材”がいなくなったことで業務効率は向上。ここから急成長の階段を駆け上がることになった。
慶応義塾大学の山本勲教授と早稲田大学の黒田祥子教授は、様々な企業の経営データを分析し、多くの日本企業は、人材の流動性を高めるほど業績が改善される可能性が高い、と結論づけた。
~中略~
(日本的雇用慣習の強い企業群)は、社員を入れ替えたり辞めさせたりして右に行くほど、ラインに沿って業績が上昇していくことになる。まさに「いない方がマシな人材」が相当数に及んでいる証拠だ。

 

ここで正論.まったくもって指摘の通り.パフォーマンスの悪い使えない人材を解雇して,優秀な人材を獲得するのが理想であり,合理的である.バリューを生み出さないだけでなく,いるだけ仕事の効率を下げる人材やポストがあるという話(お前にホウレンソウする価値があるのか?って言いたくても言えないよね).

 

そして最終章のPART3は進むべき道として,日経ビジネスとしての解決策の提案である.目指すべき道の一つとして以下の画像が示されている.

 

 

勘弁してくれ(笑).

 

※続く