★エントリーシートでつまらない質問項目を課す残念な日本の新卒採用★

エントリーシートの質問項目

◆「新卒採用」エントリーシートで企業が問うべきことは何か? | エントリーシート課題のひどい項目のケーススタディ | エントリーシート質問項目の考察「就職活動」◆


ランキングが大好きな東洋経済オンライン(無意味なランキングが多い)が,エントリーシート課題についての調査記事を掲載していた(→「エントリーシートの課題」が印象的な20社).日本企業の採用はリクルートが就活支援というビジネスで切り拓き,リクナビやマイナビというネット就活支援サービスが登場して以来,葉書や郵送がネット申し込みやWEBエントリーに代わった程度で,まるで進化も進歩もしていない.どれだけの企業が前例踏襲で想像力の欠片もない採用を実施しているのかを,本記事で確認することができるので,ご覧になっていただければと思う.加えて考察することとしたい.

 

 

■三井住友海上火災保険のエントリーシート課題

「専攻テーマ(100文字以内)」

「体育会での戦績(50文字以内)」

「部活動での戦績(50文字以内)」

「サークルでの戦績(50文字以内)」

「その他課外活動の特筆すべき成果(50文字以内)」

「あなただけの一芸(50文字以内)」

50文字以内で書かせる意図は? Twitterに140文字以内で価値のある情報や,魅力的な文章を記載することでさえ難しいのに,50文字以内でそれを問う.エントリーシート項目をなぜこんな簡単で単純にしているだろう? これは属性とステータスで判断しているからであると推察する.わかりやすいくらいに体育会の人材を欲している.大変に潔いと評価したい.

 

文章を書く能力なんて求めていないのだ.保険商品開発で重要なのはクオンツの質,そして販売はマーケティング戦略と営業.クオンツは高度な数学・計算スキルを備えた超優秀な人材にしか務まらないし,マーケティングは全社で数パーセントいれば事足りる.大半の総合職人材に課されるのは営業であり,営業に必要なのはやり抜く力とストレス耐性.それを一番わかりやすく確認できるのが部活動&体育会での成績であると判断しているのだろう.

 

極めて賢い判断であると感心する.口だけ達者で手足を動かさない意識の高い学生が創作したエントリーシートを採点するよりも,成績で示される事実を確認した方がずっと効率的であり合理的だ.採点の目的も明確にせず400文字~800文字の項目を記載させている企業は三井住友海上を見習うべきだ.伊藤忠商事も同様にシンプルであり,好感が持てる.

 

 

次に紹介されているのが旭化成と資生堂のエントリーシート.

■旭化成のエントリーシート課題

「右の9つのワードのうち3つ以上のワードを用いて、自由に文章を作成してください。物語、詩、自分の考えなどどんな内容、表現方法でも結構です。(全角200字以内)<科学・熱・創造・結束・C・原理原則・大気・宿命・いぬ>」

 

■資生堂のエントリーシート課題

「145年続いてきた資生堂の社名を変更する、重要なミッションをあなたにお願いします。新しい社名と、未来の社員にも語り継がれるようにその理由も説明してください。(1)社名 日本語50文字以下 (2)理由 日本語500文字以下」

エントリーシート課題にユニークさを持ち込み,個性を発揮させようとする意図が読み取れるが,この質問への回答をどう採点するのか? を考えると疑問である.旭化成の200文字以内という中途半端な文字数は,読む側の稼働と都合を優先したことが明らかであるし,資生堂の課題はそれを学生に問うのか? という根本的な部分に疑問を持たずにはいられない.

 

サブブランド(エリクシールやアクアレーベル,ツバキのような各ブランド)の企画や展開を書かせるならわかるが,圧倒的なブランド資産である「資生堂」という社名を変更する? 冗談でも問うべきことではないし,ブランド棄損につながるような質問を項目に挙げること自体が理解に苦しむ.シャネルやロレアルが社名を変更するか? 社長はチェック体制を厳しく実施すべきだろう.化粧品なんてそもそも成分や効果ではなくイメージで…(自主規制)

 

カゴメの課題も首をかしげたくなる.

■カゴメのエントリーシート課題

「カラオケの持ち歌」

「あなたは、どのような人ですか? 自由に表現してください!(具体的な経験やエピソードも交えて)」

カラオケの持ち歌は「行かない,時間の無駄」と解答したら良いし,どのような人か? は定性的な質問をするにしても度が過ぎる.評価軸を持たずに問うているのだろう.トマトと野菜が主軸商品なのだから,それに関することを問えば良い.例えば,野菜・健康をキーワードにしたビジネスプランやアイデアを書かせれば面白いのではないか.100に1つくらいは検討に値するアウトプットが出てくるかもしれない.カラオケの歌はエントリーシートで問うことか? アイスブレイクのつもりかもしれないが,実に馬鹿馬鹿しい.

 

日本航空(JAL)は質問項目に志望動機がないとのこと.全面的に支持したい.志望動機なんて問うこと自体が時間の無駄だ(★就活に志望動機は必要か? ESと採用面接で学生に問うべきこと ニトリの新卒採用から考察★).

 

サントリーは「白紙に自由に自分を表現するという形式」とのこと.学生が個性を発揮できる白紙のキャンパスをエントリーシートで課すのは,表現側・採点側ともに自由度が高く評価したい.

 

ところで,サントリーESとは関係ないが,模造紙に書かせる課題や選考もやめたほうがいい.日本のIT遅れはマインドが紙文化から離れられないことが大きく起因しており,致命的な欠陥だ(新たなプレゼンツールも魅力的だが,弊社は全面的にパワポを支持する).

 

本田技研工業(ホンダ)はエントリーシートに4000字弱を課しているとのこと.提出側の本気を問う姿勢が見て取れる.

 

結論としては「目的と評価軸を持ってエントリーシートの質問項目を設定すべきである」と述べたい.そして,優先事項はシンプルかつ簡単にすること.採用倍率が数十倍~数百倍の学生人気が高い企業以外は,ユニークなエントリーシート質問を課すと志望者激減に直結するので注意が必要だ.

 

だから,成績や戦績,資格やスコアなど,定量的に判断できる指標を書かせるのは良い.定性的なことはエントリーシートで判断することは難しいと割り切るのが良いだろう.30分×3回の面接でも見落とすことを,やっつけ仕事のエントリーシート選抜(稼働をかけてないでしょ?)で見抜けるはずがない.

 

弊社では採用戦略とインターンシップ採用を推進・支援しているため,仕事の依頼をお待ちしている.