★イトーヨーカドーのセルフレジの問題点から考える日本企業の生産性の低さ「電子決済が普及しない理由」★

セルフレジ

 

◆「イトーヨーカドーの中途半端なセルフレジ考察」「袋を販売する店員がいるイオンのセルフレジ」日本でセルフレジや電子決済が普及しない理由は「魅力的な決済システムを導入できない日本企業の愚鈍さ」「消費者の低いITリテラシー」「知識や技術を学ぼう&活用しようとしない日本人の学習意欲の低さ」にある◆

 

<要点(SUMMARY)>

  • 「ITは使い方次第で絶大な効果を発揮するにも関わらずIT導入を人手不足や人件費削減に繋げられない日本企業の愚」
  • 「魅力的なセルフレジを提供できず,簡易なセルフレジも使いこなせない客が,電子決済を活用できるはずがない」
  • 「日本の絶望的な生産性の低さはサービス業の残念なITシステムへ投資にある.酷い仕様と運用のセルフレジを提供する日本のスーパーマーケット」
  • 「イトーヨーカドーのセルフレジは有人で混雑緩和に貢献せず」
  • 「イオンのセルフレジはレジ袋を店員が持ってくる非生産的なワークフロー」

 

本稿は1年以上ぶりにスーパーマーケット(2大GMSのイトーヨーカドーとイオンで買い物)に行き,日本のITと決済の環境を目の前にして気づいたことの考察である.日本の残念なIT環境への苦言と,日本社会のITリテラシー欠落の嘆きであり,日本人の学ぶ意欲の低さについての絶望でもある.悲観的な要素しかほとんどないが,少しでも改善することを願い綴ることとしたい.

 

 

私は日用品や生活用品の全てをAmazonで購入しており,飲食はすべて外食か中食で済ます.だからリアル店舗を利用することはほとんどない.コンビニでドリンクを買うくらいである.だから,スーパーマーケットに行ったのは実に1年ぶりである.GMSで買い物することになった理由は以下の通り.

 

 

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●イトーヨーカドーのセルフレジは中途半端で非効率

 

 

仲間との買い出しの前に,自宅の最寄のスーパーマーケットに肉屋が入っていたことを思い出し,サプライズとして肉の塊を事前に購入するべく1年ぶりにイトーヨーカドーに行った.黒毛和牛のサーロインブロックが1000円/100グラムで販売していたので,500グラム分切って貰った.商品としては良い.肉を決済するべくレジに向かうと,レジシステムが改修されてセルフレジが導入されていた.

 

 

ちまたでは主にQRコード決済を中心とした電子決済の導入が叫ばれているが,スマホを持たない高齢者や,スマホを持っていても電話やLINEを使っているだけの人々が大半の中で,電子決済を消費者に利用させるのは困難だろう.利用者のリテラシーの観点から,サービス導入が難しいとの立場である.

 

 

だがしかし,セルフレジは基本的には簡単で消費者に優しいサービスである.自分でバーコードリーダーでスキャンして,袋に詰め込み,現金やクレジットカードやポイントカードなど好きな手段で支払うだけだ.どんなにITリテラシーが低い消費者であっても,1回か2回説明されれば理解できて利用できるシステムであると考えている.

 

 

そしてイトーヨーカドーのセルフレジを見て驚いた.セルフレジに店員が立っているのである.イオンのセルフレジは何度か試したことがあるものの,イトーヨーカドーのセルフレジは初めてであったため,並ぶこととした.空きのセルフレジがいくつかあったが,只今停止中との張り紙がしてある.セルフレジがシステム停止中ではなく,店員がいないのでレジを休止しているようだ.意味が分からなくて頭痛がする.繰り返すがセルフレジが店員がいないので停止中.

 

 

レジ待ち5番目の自分の番が来た.そして驚愕した.イトーヨーカドーのセルフレジは店員がバーコードリーダーをスキャンして合計金額を算出して,別途,隣の決済端末へ移動して,支払いだけを機械で実施する(つまり支払いのみセルフサービス)システムであったのだ.レジ店員は従来と変わらず配置されており,お金のやり取りだけが人→機械へ変更された.私は速やかにカード支払いをすることが出来たが,決済端末に慣れていない消費者が続出.その説明のために店員が配置されており,頭痛がさらに悪化した.日本の生産性は低いどころか絶望的に悪くて馬鹿なんだと思い知らされた.

 

 

私はセルフレジを利用できない人間を馬鹿にするつもりはない.電子機器に不慣れで初めてセルフレジを利用する者にとってはわからないこともあるだろう.だからそれを否定する気は欠片もない.問題はイトーヨーカドーのセルフレジシステムと決済インターフェースである.セルフレジにするなら人の役割をシステムに移行するのが当然であり,支払いというフェーズだけをショートカットしても人件費を合理化できていない.そもそも,商品スキャンを店員がやり,支払いだけ精算機が対応ということで,まったくショートカットできていない.

 

 

そして,決済端末のインターフェース問題.最初の画面が「(イトーヨーカドー)アプリ会員」ですか?と問うてくるのだ.馬鹿なんじゃないだろうか,イトーヨーカドー.一部の主婦や消費者がアプリを活用しているかもしれないが,ほとんどの高齢者は何を聞いているのかさえわかっていない.

 

 

最初に問うべきは「現金」か「クレジットカード」か「nanaco」かの支払い方法の選択であり,イトーヨーカドーのアプリ会員に何らかの特典があるにせよ,それは最初に表示することではないし,決済フローに入れ込む必要はない(決済後に表示するのも一手).この馬鹿みたいなシステムを設計した日本のシステムベンダー,それを疑うことなく受け入れたイトーヨーカドー(セブンアンドアイ).どちらにも有能な人材はいなかったのだろう.

 

イトーヨーカドーのセルフレジをもう一度確認したかったため,再訪してきた.正確にはセルフレジではなく精算機(笑).東芝テック製である.

 

  1. セルフレジにも関わらず,店員がいないと稼働しないレジ.
  2. 最初の画面がイトーヨーカドーアプリはお持ちですかの表示.このフェーズは不要.
  3. 支払方法の選択はわかりやすい.文字が大きいのも良い.
  4. クレカ払いやnanaco払いを選択すると,決済は一瞬で済む.

 

決済端末のインタフェースやシステムとしては及第点であるが,店員が商品スキャンをするという半自動システムはスピードアップに貢献しておらず,稼働をかけて非効率なことをしているのは理解に苦しむ.繰り返しになるが,最初のアプリの有無を問う画面は馬鹿げている.

 

 

アプリの有無がイトーヨーカドー利用のインセンティブになることはありえないし,アプリをどうしても使わせたいのであれば,支払方法選択時か,支払い後にQRスキャンでもさせれば良い.システムは悪くないのに,運用側がIT活用方法を解していないから,結果酷い現場になる.生産性の低さは日本のお家芸.

 

 

セルフレジを導入して客の待ち時間を減らしたり,決済の手間を減らすというベネフィットを与えるのではなく,セルフレジという名の精算機に多大な投資をして,逆に不要な稼働をかけるのは,日本の先進国最底辺のITリテラシーを表しており,ケーススタディとして教材にしたいレベルである.

 

 

●イオンのセルフレジでは店員が袋を設置して回っている

 

 

イトーヨーカドーの残念なセルフレジを後にして(企業も消費者もどちらも残念で暗い気持ちになった)待ち合わせ場所で皆と合流して,イオン(マックスバリュ)に向かった.必要な食材をカゴに入れてレジへ.イオンは有人レジとセルフレジが明確に分かれており,通常の有人レジは大行列で無人レジはガラガラ.もちろん我々は空いているセルフレジに向かい支払いをすることにした.

 

 

そこで驚いたのが「レジ袋」の購入である.セルフレジ端末の最初にレジ袋を使用されますか?との表示が出てくる.レジ袋が欲しいのではいと選ぶ.すると,近くにスタンバイしていた店員さんがやってきて,レジ袋を指定の位置に設置してくれたのだ.

 

 

イオンのセルフレジではレジ袋を設置する店員がいる.3年くらい前に初めて経験して驚いたことであるが,2018年現在も変わっていなかった.めまいがするようなフローである.もちろんこの店員はレジ袋の販売と設置だけをしているのではなく,セルフレジを使いこなせないお客様のサポート要員として配置されているのだが,少なくとも我々が決済をしている間に実施していた仕事は,各セルフレジへのレジ袋の設置であった.腐ったシステム設計と運用である.

 

 

合理的な解決策は他にいくらでもある.レジ袋にバーコードを印刷して購入できるようにしたり,マイバック利用者にポイントや割引還元して,レジ袋の課金を前提にするなど,少し考えるだけで解決が可能であるのに,イオンは改善する気配すらない.イトーヨーカドーのセルフレジと同じく,優秀な人間がどこにもいなかったのと,ここでも利用者のことを考えたITシステムベンダは皆無であったのだろう.

 

 

●日本で電子決済が普及しない理由→メリットを示せない日本企業と消費者の意識の低さ

 

 

セルフレジでレジ袋を販売する係がいる.先日「中国北京の最新スーパーマーケットが凄い」とのレポートを興味深く読んだが,イオン(マックスバリュ含む)は日本一のスーパーマーケット.それがこんな酷いレジシステムを導入している.店舗のシステムも客の(ITリテラシー)レベルも中国に周回遅れになりつつある.

 

 

中国人留学生の子に「日本人はどうして有人レジに並ぶのか理解できない」と問われて,一般的な日本人は時間の価値が低いんだよ.と説明したところ,確かにその通りね,学習意欲も低いよねw との回答が返ってきて,日本の残念なIT環境に関するモヤモヤとしていた謎が解けた.

 

 

これまでは「日本の電子決済はどうして普及しないのだろう?→日本人のリテラシーが低いから」と答えになっていない説明を目にするばかりであったり「便利なセルフレジをどうして利用しないのだろう?→お客様意識とセルフレジの仕様の酷さ」も一理あると考えたが,セルフレジはインタフェースに改善の余地はあるかもしれないが十分に便利だ.とすると「セルフレジや電子決済が日本で普及しないのは日本人の時間価値の低さにある」のではないかと電撃が走ったのである.

 

 

ファストフードの牛丼無料に1時間以上を喜んで使う人々がたくさんいる,格安ガソリンスタンドに20分遠回りして行列等ができる.300円や500円得をするために60分を厭わないケースで溢れている.少しでも得をすることに対しては日本人は中国人以上に貪欲であるけれども,金銭的メリットがないことに関しては驚くほど関心が低い.そうお金の時間的価値が著しく低いのだ.

 

 

セルフレジや電子決済は便利かもしれないけれども割引が受けられるわけじゃあないし,学ぶのは面倒だから利用しない.おそらくこれが答えだろう.目が覚めた.金銭的なメリットというニンジンをぶら下げない限りは,学ぶ意欲のない人々を動かすことはできない.当たり前のことなのに気づけなかった自分の愚鈍さと,日本人の時間価値が低いからこそ,適当な餌をばら撒けば食いつくのでは?

 

 

だからLINEPayが10円を送り合って人気商品がもらえる「10円ピンポン!キャンペーン」を実施していたのだ.LINEPayは自分では利用しているし,コンサルティングの商材として積極的に導入を働きかけているけれども,実に激しく鬱陶しいCMでローソンのコーヒーやマックのハンバーガー程度に誰が釣られるのか? と疑問に思っていたのだが,大衆の時間価値の低さと,携帯キャリアの牛丼無料クーポンに人が殺到することを考えれば合点がいく.マーケティングは行動心理学であるのに,自分には理解できない層を直視していなかったのは反省しなければならない.