★「セントレア」中部国際空港は格安航空で目指せ利用者増「LCC」★

★「セントレア」中部国際空港は格安航空で目指せ利用者増「LCC」★

 

セントレア , 中部国際空港

 

◆セントレア(中部国際空港)は国際線&国内線ともに撤退が続いたが,インバウンド需要を契機にLCCで再起を賭ける | 旅行客の少ない中部地区において格安航空は成功できるか?◆

 

セントレア発着の「エアアジアX」名古屋-クアラルンプール線が1年足らずで運休してしまいました.中部国際空港ではいま何が起こっているのでしょう? というわけで,今回は中部国際空港の現状分析と今後の展望についてレポートしたい思います.というのも,地元ということもあり,中部国際空港の動向や業績はウォッチしてきましたが,計画段階や開港時は華々しくスタートを切ったにも関わらず,利用者数は想定に達せず,業績も厳しい状況が続くその苦労は,ケーススタディとして興味深くご覧になっていただけること間違いなしだからです.羽田空港(東京国際空港)や伊丹空港(大阪国際空港)との比較もご覧いただきつつ,セントレアを応援していきたいと思います.定量分析だけでなく定性分析もいたしましょう.

 

 

●中部国際空港の現状分析.セントレアの利用客数(旅客数)は日本で8位●

 

中部国際空港の利用客数は日本で何番目かご存知ですか? 地元の人もたぶん驚く程に少ない搭乗者数をまずは紹介します.セントレアの旅客数は約981万人(2014年度).比較がないとこの人数の多少はわかりにくいと思いますので,下の数字をご覧下さい.

 

<空港利用者数ランキング(2014年度)>

1位 羽田空港:7,423万人

2位 成田空港:3,267万人

3位 福岡空港:2,000万人

4位 関西空港:1,992万人

5位 新千歳空港:1,953万人 

6位 那覇空港:1,753万人

7位 伊丹空港:1,462万人

8位 中部空港(セントレア):981万人

 

日本一の旅客数を誇る羽田空港の7分の1の水準であるだけでなく,成田空港,関西空港,伊丹空港にも遠く及びません.それどころか,新千歳空港(北海道),福岡空港,那覇空港にも及ばない人数です.開業時「成田・関空に次ぐ3つ目の国際空港が誕生」と大々的に報道され,日本第3の都市名古屋をバックに持つ国際空港でありながら,旅客数が驚くほどに少ない.これがセントレアのステータスです.

 

 

●セントレア苦戦の理由「国内線のビジネス客需要」がない●

 

セントレアの国際線

なぜこれほどまでに利用者が少ないのでしょう? 定量分析の前に個人的な定性分析を述べたいと思います.1つには国内線のビジネス客の需要が圧倒的に少ないこと.これはトヨタを中心とする製造業が集積する名古屋は,他府県からのビジネスマンの行き来も豊富でありますが,彼らが飛行機で名古屋に降り立つことはまずありません.想像してみてください.東京や大阪から名古屋へのアクセス手段は? JR東海のドル箱路線「東海道新幹線」に乗って東京/大阪からやって来ます.この点が利用者数上位の空港との圧倒的な違いでしょう.

 

東京から札幌や博多に行くにはほぼ100%飛行機で移動しますし,マイラーの方々は東京⇔大阪間も飛行機で移動する方が少なからずいます.新大阪駅から大阪駅への乗り換えを考えると,時間的にはほとんど変わりませんからね.つまり季節に左右されない優良顧客であるビジネスマンが中部国際空港の国内線を利用することはまずない.これは他空港に比べてセントレアが特殊な点であると言えます.実際に国際線の利用者数は中国人のインバウンド需要を中心にこの2・3年で増加しておりますが,国内線は低迷が続いています.

 

 

●愛知県民・東海地区住民は飛行機に乗る機会が少ない●

 

セントレアの分析

そしてもう1つ考えられる理由は,愛知県民および東海地区住民の県民性でしょうか.そもそも地元意識が強い東海地区で,地元に在住している人々はおらが街志向が非常に強い.活発に国内旅行や海外旅行をするタイプの人々は地元を離れて東京で働いている割合が多いと考えられます.加えて地元出身率も高いので東京や大阪のように田舎から出稼ぎに来ている人数は決して多くありません.とすれば,誰が飛行機を利用するの? という話になるわけです.飛行機による帰省需要がないことはセントレアの国内線の少なさにも表れていると言えるでしょう.

 

 

●中部国際空港は撤退路線が相次ぎ使い勝手が悪化●

 

 2010年1月に日本航空が会社更生法を適用し,セントレアとの空路だけでなく,他空港でも国際線・国内線の採算が悪い路線を廃止しました.特に地方空港への就航は激減し,だだでさえ少なかった中部国際空港からの地方路線は両手で数えて余る程度の数となっております.加えて,国際路線の撤退は見ていて痛々しい程の激減ぶりです.以下が主な国際線の廃止路線です.

 

・JALの撤退路線(都市):北京,マニラ,バンコク,グアム,パリ 他

・ANAの撤退路線(都市):天津,台湾 他

・その他航空会社撤退路線(都市):シカゴ,サンフランシスコ,ホノルル,

  バンクーバー,トロント,ケアンズ,シドニー,オークランド 他

 

はっきり言えば,アメリカの西海岸にも渡航せず,欧州にはドイツとフィンランドにしか行けない国際線をいったい誰が利用するというのでしょうか? 加えて自動車部品の空輸を見込まれた貨物便も需要予測に届かず,全日空は2008年3月に貨物機による運行を廃止し,2009年にフェデックスも撤退するという国際空港としての地位すら危うい状況と言えなくもありません.他の問題も見てみましょう.

 

 

●セントレアへのアクセス 利便性は高いが運賃が高い●

 

中部空港へのアクセス

名古屋駅からセントレアへのアクセスは「直通で28分」「運賃は1,200円」.先ずは飛行機に乗るまでの中部空港へのアクセスを紹介します.空港へは名鉄名古屋駅(名古屋駅から徒歩3分程度)から全車両特別車の「ミュースカイ」直通で最短28分です.小牧の名古屋空港に比べてアクセスが悪くなったとの声がちらほら聴かれますが,この直通28分は国内屈指の利便性を誇る福岡空港には劣るものの,悪くないアクセス時間とも言えます.(車でのアクセスは名古屋市中心部から高速利用で40分〜/1,800円とそれなりの時間と結構な値段になりますが…)

 

がしかし,セントレアを語る際に一番不満が多く出て,評判が悪いのがそのアクセスにかかる費用でしょう.つまりは運賃ですね.名鉄名古屋駅からセントレアまでの最短28分の電車は「ミュースカイ」という特急ですが,こちらは全車特別車両となっており次の費用がかかります.

 

「乗車券:850円+ミューチケット:350円 → 計:1,200円」

 

たった30分弱の距離の電車を乗るのに「1,200円」もの運賃がかかります.競争がないところにお得な料金は発生しえない典型的な例だと言えるでしょう.元々名鉄は運賃の高いことで悪評高いですが,このセントレアへのラインはバスによる需要が少ないことから,伊丹空港のようにバス路線が発達しておらず,利便性を考慮した際の唯一の選択肢が名鉄によるアクセスとなり,ライバル不在で高値維持となっています.

 

 

●セントレアへの期待 格安航空は海外路線よりも国内路線重視へ●

 

セントレア不振の一番の原因は甘い需要予測(希望的観測)にあることは間違いないでしょう.ビジネス客需要だけでなく,東海地区の住民の意識と行動範囲を少しでも適切にリサーチ&分析すれば,愛知県民や岐阜県民,三重県民が飛行機を利用する意欲や機会を向上させることが高いハードルであることは判明したはずです.

 

現在セントレアが生き残りをかけて画策している戦略がLCCの誘致&増発だと思われます.北海道や九州にリーズナブルに旅行できる格安航空は,内向きで遠くへ足を伸ばさない愛知県民の心をくすぐる威力があります.1万円で北海道や沖縄に行ければ,旅行需要を喚起する力があるに違いありません.加えて,地方からのアクセスが安く便利になるということは,出稼ぎ労働者の取り込みも可能となります.格安航空会社を誘致するだけでなく,魅力的なフライトスケジュールとなるように戦略的な協力関係を築くことが必要でしょう.

 

国際線については個人的には難しいと考えています.今回の「エアアジアX」のクアラルンプール路線も早々に撤退したように,愛知県民の旅行需要だけではなく,マレーシアの旅行先としての魅力をトラベラーに訴えかけるのは非常に難しい.アジアであれば台湾,グアムやハワイなどへの離島への格安航空が就航する方が搭乗率はUPすると思います.もしくは「名古屋〜成田」をLCCを増発して,名古屋から成田を経由しての海外便へのアクセスを向上させる方が現実的には利用者増を望めるのではないかと考えています.いずれにせよ,国際線で名古屋人を取り込むのは難しいでしょう. 

 

そして,空港へのアクセス料金は下げるべく対策を打つべきでしょう.名鉄に問えば「利用者が増えないから運賃が下げられない」「路線維持に必要な費用」なんて回答が返ってきそうですが,LCCをはじめとする航空路線の拡充と併せて,空港までの費用を下げる努力をすることがセントレアの活性化,利用者増には欠かせません.県が補助するなり,空港と名鉄が折半するなりいろいろ策は考えられます.

 

いろいろ苦言を呈しましたが,中部国際空港自体は新しい空港だけあり実に機能的な素晴らしい空港です.改札からの搭乗口への距離の近さと,ユニバーサルデザインによる「バリアフリー」は日本一ではないかと思います.旅行客の動線が緻密に計算されており,駅からチェックインまで上下階に移動する必要がないので,障がい者の方に優しい設計であるだけでなく,重い荷物を持つ旅行者にもありがたいです.

 

そして,空港の規模が小さいこともありますが,空港内の構造が非常にわかりやすい.国際線・国内線ともにL字型のターミナル構造となっており,迷うことがありません.※成田空港の利用者を迷子にさせようと画策したかのような造りに比べたら素晴らしい仕様です.

 

再興(って破産していませんが)の道のりは安易ではないものの,的確な戦略策定し実行することと,他のプレイヤーを巻き込むことにより,きっとセントレアは飛躍できます.個人的にはとても使い勝手の良い空港ですので,益々の発展を願っています.※愛知県が大規模展示場を建設する方向性を示しておりますが,マーケティングの観点を大切に慎重に判断いただきたいものです.